センター長ご挨拶
「こんなに早くに痛くなくなって、歩けるようになるのだったら、今まで悩んで我慢してきた日々はなんだったの・・!?」
人工関節の手術を受けた患者さんから、よく言って頂ける言葉です。
日本ではいまだに「手術は病気がどうしようもなくなって仕方なくやるもの」との負のイメージが根強いですが、欧米では「痛みが取れるなら手術して、これからの人生を楽しく暮らそう!」と前向きなイメージが主流です。そのため、人工関節を専門に行う施設が多数できました。やはり、専門の医師・看護師とリハビリのスタッフが揃って治療にあたった方が手術も術後の経過も良く合併症が少ないのは自明の理ですし、実際にその様なデータが多数報告されています。
日本では大きな公的病院が医療の中心をなしてきた歴史があり、“専門に特化した医療”より“広く様々な病気に対応可能な医療”が重要視されてきました。その結果、「通院する毎に主治医が変わる」、「どの医師が何の専門なのか分からない」、「望んでいる外科医が執刀したのか、研修医が手術をしたのか分からない」等々の声をよく耳にします。
にもかかわらず大きな総合病院に集まる理由は、日本は情報公開が遅れたことと、「大病院であればスタッフが揃っているはず」という幻想があるからです。現代の医療は非常に細分化されており、“総ての専門家を集め、それぞれが高度な医療を提供可能な病院”は大都市圏でもほんの一握りです。
様々な情報が書籍やインターネットなどで集めやすくなるに従い、“広い分野に適度に対応可能な医師”より“ある分野に卓越した技量を持つ専門家”を求める傾向が強くなりました。
私も大病院を中心に人工関節を専門としてきましたが、大病院の長所も短所も知れば知るほど、人工関節センターとしては小回りの効く規模の方が手術と看護とリハビリ総ての面で専門的かつ最新の医療が行いやすい事と、個々の病状や背景に合わせたきめ細かい医療を提供する為には、むしろ、外来から手術からリハビリまですべてに目が届く施設の方が理想的だと考えるようになりました。
以前に比べて人工関節の長期経過が良くなり、リハビリや入院期間も短くなり、患者さん自身の前向きに人生を過ごしたいとの希望が合致し、日本でも年間10万件以上の人工関節置換術が行われるまでになりました。我々は大病院での画一的な治療ではなく、一人一人にベストな医療を通じて、皆さんの積極的な人生を応援していきたいと考えています。
院長 兼 人工関節センター長